安心して服薬してもらうために

お薬の話

 先日、病院から帰ってきた私の母がとても不機嫌だったので、尋ねてみると「(調剤)薬局で薬をもらうときに、薬剤師から根掘り葉掘り質問攻めにされて、とても不愉快だった」のだそうです。
皆さんの中にもそんな経験をされた方がいらっしゃるかもしれませんね。
でも、その薬剤師は決して興味本位で質問をしているわけではありません!
 調剤薬局とは、病院が発行する『院外処方せん』を受けて医薬品を調剤し、患者さまに安全にお薬を飲んでもらうための説明をしながらお薬をお渡しする機関です。そのため、来局された患者さまの薬歴(薬の記録)を個別につけて、新しく出たお薬が妥当か、現在服用中のお薬と飲み合わせは悪くないか、などを細かくチェックしているのです。

 今回、母が訪れた薬局でも、その薬剤師は母の薬歴を作成するために、病歴(既往歴)やアレルギーの有無、今の病状や受診理由などを細かく聞いてきたのだと思います。母が安心してお薬をのむことができるように・・・。
というのも、医薬品には名前がそっくりなものが多く、一文字違いで全く違う作用を持ったお薬が処方されてしまうケースがゼロではないのです。
実際これまでにも、血圧のお薬と抗がん剤を誤って処方されてしまった事例や、血圧のお薬と糖尿病のお薬を間違ってしまった事例など、残念ながらニュースや紙面を賑わせたことがありました。
 
 お薬を渡す最終段階の薬剤師は、そういった間違いを防止するために、患者さまから病状やアレルギー歴などをお伺いし、安全をより確実なものとしているのです。なんせ、院外の薬局では一枚の処方せんと、これまでの薬歴しか情報源がないのですから、患者さまとの会話は薬局薬剤師にとっては非常に貴重なものなのです!何気ない会話の中から嗜好品や生活スタイルを聞き出して、飲み合わせの注意を促したり、お薬をのむ時間を最適な時間にずらすことも実際にあります。ご自分の身を守るためにも、ぜひご協力ください。

もちろん、周りにほかの患者さまがいて、プライバシーが気になる方もいらっしゃいますよね?そんなときは遠慮なくその旨お伝えください。通常の薬局であればきちんと対応してもらえるはずです。この日、母には「そんなにいっぱい訊いてくれるってことは、その分、安全が保障される、ってことなんだから、安心できるイイ薬局に巡り合えてよかったじゃない!」と話し、ちょっとだけ機嫌をなおしてもらいました。

  余談にはなりますが、最近当院では、外来診察時に患者さまご自身でお名前を名乗っていただこう、というキャンペーンを始めました。患者さまのご本人確認を確実にし、皆さんに安心して診療を受けていただくための大切な取り組みの中の一つです。入院されるときにリストバンドを装着させていただくのも、これと同じ目的です。

患者さまの安全と安心のために、当院ではこれからも様々な取り組みをしていきますので、煩わしいこともおありでしょうが、ご理解とご協力を賜りますようお願いいたします。


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