検査値をみてみよう

検査のお話

 定期の健康診断や人間ドックで自分の健康を知る機会が増えていると思います。健康診断は自覚症状が現れる前に異常をみつけ、予防や早期治療を進めていくという目的があります。
検査を受けると「検査データ」が届けられます。この数字やデータは、あなたの健康を知る大切な結果です。
検診を受けただけで終わらず、検査結果をみてみましょう。
今回の豆知識では血液検査のひとつである生化学検査の主な項目についてお話したいと思います。
◎基準値とは
 正常値?異常値?
検査の“基準値”は健康な人の検査値をもとに、そのうち上位と下位の各2.5%を除いて残る95%の人が含まれる範囲のことを言います。
つまり、健康であっても5%の人は基準値を外れるとこになります。単純に基準値の範囲内なら健康、外れたら異常ということではありません。
◎検査結果は捨てないようにしよう
  検査結果はまとめておいて経年変化をチェックしましょう
健康診断の結果は過去の自分との比較が大切です。総合判定だけでなく各項目ごとにみてみましょう。毎年の健康診断の結果を保存しておけば“過去”と“今”を比較することができます。

それでは、項目ごとにみていきましょう。
今回のお話では、肝臓の検査・尿酸代謝の検査・腎機能の検査・脂質代謝の検査についてみていきます。
▼肝臓の危険信号??
 人体のなかで最も重い臓器、それは肝臓です。主なはたらきは代謝・貯蔵・解毒・胆汁の生成ですがこのほかにもたくさんの役割を担っています。
肝臓は“沈黙の臓器”とも言われるように障害が進まないと症状が現れにくいといわれ、血液検査をきっかけに異常がみつかることの多い臓器です。
肝臓の検査はたくさんありますが、当院ですぐに検査できるものをご紹介します。
検査項目 解  説
T-Bil 総ビリルビン(T-Bil)、直接ビリルビン(D-Bil)といい、赤血球中のヘモグロビン代謝産物で、黄色い色素です。様々な肝障害や胆管障害で高値になります。高値になると黄疸症状がdてきます。
D-Bil
AST(GOT) 肝臓の細胞の中にある酵素で肝機能を調べるもっとも一般的な検査になります。肝臓のほかに心臓、腎臓、骨格筋などにも含まれています。様々な肝障害で高値になります。
ALT(GPT) AST(GOT)と比べて特に肝臓に多く含まれている酵素で、肝障害時の特異性が高い検査です。様々な肝障害で高値になります。
LDH 様々な臓器に含まれている酵素ですが、肝臓、腎臓、心臓、骨格筋、赤血球に多く含まれています。
ALP 肝臓、骨、小腸、胎盤に多く含まれている酵素です。
γ-GTP 肝臓、腎臓、膵臓、血液などに含まれている酵素です。アルコールや薬剤などが肝臓を破壊したりした時や胆管が詰まるような病気になった時に高値になります。
特にアルコールでの肝障害の場合、他の酵素よりも早期に高値になりますので、アルコール性肝障害の診断に重要な検査です。
ChE コリンエステラーゼといい、蛋白質を作り出す酵素です。肝機能の低下とともに低値になりますが、脂肪肝があると高値になります。
NH3(アンモニア) 肝臓の機能が著しく低下したときに体内で生成されるアンモニアが処理できずに高値を示します。
▼尿酸値、気にしていますか??
 尿酸ときいて、“尿の検査”と思われる人もいるかもしれませんが血液の検査です。尿酸は体内でのプリン体の分解によって生じる老廃物で、尿酸が増えると手足の関節などに沈着して急激な痛みと腫れをともない、痛風の発症要因となります。
ビールや肉類、豆類などの食品にはたくさんのプリン体が含まれており、これらの食品を食べ続けると、血液中の尿酸が上昇し、男女とも7.0mg/dlを超えると“高尿酸血症”と診断されます。

しかし、尿酸値は性別、年齢のほか、食生活、飲酒などの習慣によって大きく異なるので、高尿酸血症を正しく診断するには繰り返し測定が必要です。 尿酸の値が高く高尿酸血症といわれたときには、尿路結石や腎の障害を起こしやすいといわれています。そのチェックには血液検査で尿素窒素(BUN)と血清クレアチニンの検査で腎臓の機能を調べます。

続いてみていきましょう。
▼尿の検査だけでなく・・・
 腎臓は血液中の老廃物や不要なものを濾過して、尿とともに排泄させ血液をきれいにする役割を担っています。すなわち腎機能が低下すると老廃物の排出がうまく行われなくなり、血液中に増えてしまいます。腎臓の機能は尿をつかった検査だけでなく、血液検査でも知ることが出来ます。代表的なものに尿素窒素と血清クレアチニンがあります。
 
検査項目 解  説
BUN(尿素窒素) 尿素窒素といい、蛋白質を摂取すると体内で分解されアンモニアとなります。アンモニアは有毒なため肝臓で尿素へと変換されます。
腎機能が低下するとBUNは尿中に排泄されず体内に増加して高値を示します。しかしBUNは腎臓の疾患だけでなく他の疾患でも上昇します。また、食事の影響を受けるため腎機能の検査としては感度の高いものではありません。
CRE(クレアチニン) クレアチニンは筋肉代謝の結果生まれた老廃物で腎臓から排出されます。クレアチニンはBUNとは違い、腎臓以外の要因の影響をほとんど受けないと考えられており、そのためクレアチニンは腎機能障害の指標として、BUNより的確とされています。
聞いたことがありますか? 推算糸球体濾過量(eGFR)
腎臓にある糸球体は血液をろ過するという大切なはたらきをし、その働き具合を示す糸球体濾過量(GFR)はよい指標と考えられています。しかし、実際に糸球体でろ過する量を調べようとすると複雑な検査が必要となってきます。
そこで、推算糸球体濾過量(eGFR)を日常検査として行っています。
eGFRは血清クレアチニン値と年齢、性別から計算することができます。基準値は90-110ml/分とされ、
eGFRが低いと腎機能が低下しているということがわかります。
▼血液中の脂肪成分
 血液中の脂肪成分(コレステロール、中性脂肪、リン脂質など)は人体にとって必須の栄養素です。脂質は食事から摂取されるほか、肝臓において合成され一定の濃度を維持しています。
高脂血症とは血液中に脂肪成分が非常に多くなった状態です。
なかでも血液中のLDLコレステロール値の高い状態が長く続くと、血管の内側に過剰のコレステロールが沈着して血管が硬くなり、やがて動脈硬化へと進展してしまいます。

脂質異常症の診断基準を以下にあげていきましょう
HDLコレステロール:40mg/dl未満
LDLコレステロール:140mg/dl以上
中性脂肪:150mg/dl以上

これらの項目は食事により影響を受けるため空腹時採決が条件となります。
検査結果が気になった方は、まず食事に気を使い運動を心がけましょう。
善玉?悪玉?
コレステロールについて“善玉コレステロール”と“悪玉コレステロール”という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。HDLコレステロールは善玉コレステロール、LDLコレステロールは悪玉コレステロールといわれています。しかし善玉、悪玉といってもコレステロール自体に“よいもの”、“わるいもの”があるわけではありませんし、LDLコレステロールそのものは決してわるいものではありません。
LDLコレステロールは身体の栄養素となる成分を供給する役割を持っています。HDLコレステロールは過剰に供給された栄養素を回収する役割を持っています。血液中にLDLが多くなりすぎるとHDLに回収されずに血管壁に沈着してしまいます。その結果、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなるとして“悪玉”と呼ばれているのです。
バランスが大切!

「LH比」というものがあります。LH比とは「LDLコレステロール値÷HDLコレステロール値」で示される比率のことです。動脈硬化の新しい指標として注目されています。
LH比は1.5以下が望ましく、2.5以上は要注意で対策が必要とされています。
LDLコレステロール、HDLコレステロールともに基準範囲内でもLH比が高いこともあります。それぞれの値を別々に考えるのではなく両方の値のバランスにも目を向けてみましょう。

 今回は以上の項目について説明しましたが、上記以外にもたくさんの生化学項目がありそれぞれみているものがちがいます。気になる項目がありましたらお気軽にスタッフまでお声かけください。

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