糖尿病の治療薬 〜注射薬〜

お薬の話

 糖尿病の治療薬には、大きく分けて内服薬(経口血糖降下薬)と注射薬(インスリン製剤・GLP-1受容体作動薬)があります。Part32では内服薬について紹介しました。今回は、注射薬のインスリン製剤とGLP-1受容体作動薬について紹介します。

インスリン製剤
インスリンは、すい臓から分泌されるホルモンで血糖値を下げる作用があります。
インスリンの分泌には、食事により血糖値が上がったことに反応して分泌される「追加分泌」と、 一日中一定の割合で分泌される「基礎分泌」があります。
インスリン療法では、これらの分泌のうち不足している分をインスリンの注射薬で補います。
インスリンは51個のアミノ酸からなるホルモンですが、健康な人から分泌されるインスリンと同じアミノ酸の並び方で作られた製剤が「ヒトインスリン製剤」、ヒトインスリンを少し変え、速く効くようにしたり、効果が長く続くように改善した製剤が「インスリンアナログ製剤」です。
以下に主なインスリン製剤の種類と特徴を紹介します。

血中インスリン濃度

 

インスリン製剤の種類と特徴

製剤の種類

主な商品名(一般名)

特徴

追加分泌を補う製剤

超速効型
インスリンアナログ製剤

 ノボラピッド注®
 (インスリン アスパルト)
 ヒューマログ注®
 (インスリン リスプロ)

 効果が早く、注射の10〜20分後に作用が現れるので、食事の直前に投与。食後の高血糖を抑える。作用持続は3〜5時間と最も短く、食間の低血糖のリスクを軽減。

速効型
ヒトインスリン製剤

 ノボリンR注®
 (生合成ヒト中性インスリン)

 注射後約30分で作用が現れるので、食前30分前に投与。作用持続は約8時間。食後の高血糖を抑える。

基礎分泌を補う製剤

持効型
溶解インスリン
アナログ製剤

 トレシーバ注®
 (インスリン デグルデク)
 ランタス注®
 (インスリン グラルギン)

 注射後約1時間で作用が現れ、作用持続は約24時間と効果が長く、1日1回投与で基礎分泌を補う。効果の明らかなピークがなく、低血糖のリスクを軽減。

中間型
ヒトインスリン製剤

 ノボリンN注®
 (生合成ヒトイソフェンインスリン)

 注射後約1時間30分で作用が現れ、ピークは4〜12時間後。作用持続は約24時間で基礎分泌を補う。

追加分泌と基礎分泌の両方を補う製剤

混合型
インスリンアナログ製剤

 ノボラピッド30ミックス注®
 (二相性プロタミン結晶性
       インスリンアスパルト)
 ヒューマログミックス50注®
(インスリン リスプロ混合製剤)

 超速効型と中間型の両方の特徴を持つ。注射後10〜20分で作用が現れるため、食事の直前に投与。

混合型
ヒトインスリン製剤

 ノボリン30R注®
 (生合成ヒト二相性
      イソフェンインスリン)

 速効型と中間型を混合した製剤。
注射後約30分で効果が現れるので、食事の30分前に投与。

インクレチン関連薬
食事をとると小腸から分泌され、インスリンの分泌を促進するホルモンをインクレチンといい、GIPとGLP-1があります。GLP-1には、血糖値が高い時だけインスリンを分泌して血糖値を下げる作用があります。また、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌も抑えます。
インクレチンは、DPP-4という酵素で分解されて働きを失ってしまいます。このDPP-4によりインクレチンが分解されるのを阻止し、インクレチンの働きを助ける薬が「DPP-4阻害薬」(内服薬Part32参照)です。また、ヒトGLP-1の構造を少し変え、DPP-4に分解されにくいように改善した製剤が「GLP-1受容体作動薬」です。
以下にGLP-1受容体作動薬を紹介します。

インクレチン関連薬

 

GLP-1受容体作動薬(ヒトGLP-1アナログ製剤)

商品名

一般名

用法・形態

 ビクトーザ皮下注®

 リラグルチド

 1日1回朝または夕に皮下注射。製剤・注入器一体型。

 リキスミア皮下注®

 リキシセナチド

 1日1回朝食前に皮下注射。製剤・注入器一体型。

 バイエッタ皮下注ペン®

 エキセナチド

 1日2回朝夕食前に皮下注射。製剤・注入器一体型。

 ビデュリオン皮下注用®

 持続性エキセナチド

 週に1回、皮下注射。キット製剤(用時懸濁)。


◆注射薬の保管について
○未使用の注射薬の保管方法
・使用していない注射薬は、冷蔵庫に保管しましょう。

未使用の注射薬の


凍結を避けるため、冷却風が当たらないように ドアポケットに食べ物と区別して保管しましょう。
凍結してしまった注射薬は使用しないでください。

使用中の注射薬の保管方法
 ・使用中は冷蔵庫に入れず、注射針をはずしてキャップをし、室温(1〜30℃)で保管しましょう。
 ・直射日光や高温を避けて保管しましょう。
 使用中の注射薬の保管方法
○その他の注意
 ・使用期限に注意しましょう。使用期限(未使用の場合)は、注射薬の本体や外箱に記載されています。
  使用開始後の期限は、製剤によって異なりますので、薬剤師に確認して下さい。
 ・子供の手の届かないところに保管しましょう。
 ・注射薬を落としたり、衝撃を与えたりしないようにしましょう。

 

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