過活動膀胱

お薬の話


トイレが近い。がまんできない・・・悩んでいませんか?

 春になり、お花見や旅行といった外出する機会が増える時期ですね。しかし、ちょっとトイレが心配で・・・とお出かけをひかえている方もいるのではないでしょうか?
年をとれば仕方ないことだし、だれかに相談するのは恥ずかしいし、命にかかわるわけではないし……なんて、尿トラブルの悩みはじっとガマンしてしまいがち。でも、この悩みは、とても大きなストレスとなり、あなたの生活の質を落としています。今回は、その尿トラブルの中でも過活動膀胱についてお話したいと思います。


 皆さんは過活動膀胱(OAB:Over Active Bladder)という病気をご存知でしょうか?この病気は、尿意切迫感を主な症状として、自分の意思と関係なく膀胱が勝手に収縮し、頻尿や尿もれを引き起こす病気です。トイレに行く回数が異常に増え、尿意を感じると我慢するのがつらく、ときにはトイレに間に合わなくてもらしてしまうこともあります。40歳以上の日本人の約810万人が罹患しているといわれ、高齢化社会に伴って、患者の数は、増大しています。
 
 
(図:アステラスHPより)
 この過活動膀胱は、脳梗塞やパーキンソン病、糖尿病や前立腺がん、前立腺肥大症、子宮がん、膀胱炎、尿路結石、などの病気が原因で起こることもありますが、多くは原因がはっきりせず、検査をしても何も見つかりません。
もともと腎臓でつくられた尿は、膀胱に溜められ、膀胱の筋肉が収縮することで外に排出されます。健康な人なら400〜500mLの尿をためることができるのですが、過活動膀胱では100mL前後の尿がたまると膀胱が収縮してしまい、急な尿意を感じたり、尿がもれてしまったりするのです。近年、過活動膀胱の概念が広まり、かつ治療薬の進歩により、症状を抑えられるようになってきました。
それでは、主な過活動膀胱治療薬のそれぞれについて見ていきましょう。
◇ 抗コリン薬
 膀胱を収縮させる信号は、“アセチルコリン”という物質が神経の末端から出ることによって、膀胱に伝えられます。このアセチルコリンのはたらきを弱めることで、膀胱の異常な収縮を抑えるのが、抗コリン薬です。 のみ始めてから1週間〜1か月で効果があらわれるので、すぐに効果がでないからといって中止をせず、根気よく服用することが大切です。 抗コリン薬の副作用には、口の渇き、便秘などがあります。最近では1日1回の服用で効果が高く、副作用の少ない錠剤も開発されています。
デトルシトール®(酒石酸トルテロジン)  
ベシケア®(コハク酸ソリフェナシン)  
ウリトス®/ステーブラ®(イミダフェナシン)※  ※:当院では採用していません
バップフォー®(プロピベリン塩酸塩)  
 
 
◇ β3受容体作動薬
 膀胱の筋肉に存在する神経伝達物質のアドレナリンβ3受容体を刺激して、膀胱を弛緩させることで尿をためる機能を改善します。日本で開発された新しいタイプのお薬で、先ほどの抗コリン薬における、口の渇き、便秘といった副作用は起こりにくいといわれています。
ベタニス®(ミラベグロン)
 今回は主な治療薬についてお話しましたが、お薬以外でも、日常生活での水分摂取を調節したり、弱った骨盤底筋をきたえる体操をしたりすることなどでも、症状の改善が期待できます。 しかし、病気が原因で引き起こされている場合もありますので、まずは、ひとりで悩まずにかかりつけの医師に相談してみましょう。


 解決の方法を探って、もう一度、快適でアクティブな生活を取り戻してみませんか?


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