「鉄不足」を防ぎましょう

栄養科コラム

「どうもこの頃疲れやすい」、「仕事の効率が悪い」、「家事をする気がしない」・・・そんな状態の影に、もしかしたら鉄不足があるかもしれません。「鉄不足」というとまず貧血をイメージしますが、実は貧血が現れるずっと前から、身体の中の鉄は少しずつ目減りしているものです。 体内で様々な役割をしている鉄。その60~70%は血液に含まれるヘモグロビンの成分として、20~30%は肝臓や脾臓、骨髄などに「貯蔵鉄」として蓄えられています。

血液中の鉄が足りなくなると、酸素が十分に運ばれなくなって様々なトラブルが現れます。でも、食べ物からとる鉄が不足したからと言って、直ぐに貧血になる訳ではありません。血液中の鉄が足りなくなると、体内の貯蔵鉄から不足分が補われます。つまり、まず貯蔵鉄が不足し、貯蔵鉄から血液中に補充できなくなると血液中の鉄も不足して、ついには貧血になるという訳です。

鉄は私たちの身体に不可欠な必須ミネラルの一つです。しかし、鉄はカルシウムと並んで不足しがちな栄養素の代表選手と言われています。体内で作られる成分にも関わらず、どうして不足してしまうのでしょうか。

鉄分は汗や排泄物と一緒に、また皮膚や爪、毛髪などの新陳代謝によって、常に身体の外に排出されています。特に、汗をたっぷりかく暑い夏は注意が必要です。汗をかくたびに、一緒に鉄分が失われていると考えたら、補給することの大切さがわかりますね。

「鉄不足」を防ぎましょう

鉄不足を解消するには?

正しい食生活を

鉄不足を防ぐために、まず見直したいのが日常の食生活。特に全体的な食事の量が問題です。
ダイエットをしている人は、カロリーを気にして食べる量を減らそうとしますが、同時に身体の機能の調節に関わるミネラルやビタミンといった栄養素も不足することに。たんぱく質・糖質・脂質・ミネラル・ビタミンを1日3回の食事にまんべんなく取り入れるようにしましょう。

鉄を多く含む食品をとりましょう

鉄の1日必要量は男性で10mg、女性で12mgです。鉄は食品から摂取しても、体内に吸収されるのはほんのわずか。鉄の吸収は男性で1日約1mg、女性で1日約1~2mgです。
鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があり、吸収率に差があります。吸収されやすい「ヘム鉄」は肉や魚に、吸収されにくい「非ヘム鉄」は野菜、貝類、穀物に多く含まれています。なるべく吸収されやすい「ヘム鉄」を十分にとるよう心がけましょう。

鉄の吸収をよくするには?

ビタミンCを組み合わせて

ビタミンCは鉄を吸収しやすい形にする優れもの。鉄を含む食品にビタミンCを添えたり、一緒に調理するなど工夫をしましょう。
野菜や果物には、ビタミンCが豊富で「造血ビタミン」とも呼ばれる葉酸も含まれています。果物は1日200g(正味)程度とるといいでしょう。朝食や食後のデザートなど、まめにとり入れましょう。

果物摂取量の目安(1日あたり)

  • みかん:2個
  • りんご:1個
  • キウイフルーツ:2個  
  • かき:2個
  • オレンジ:2個
果物

食事はゆっくりよくかんで

胃酸も鉄の吸収に不可欠です。リラックスした気分でよくかんで食べると、胃酸が十分に分泌されて鉄の吸収がよくなります。

緑茶・紅茶・コーヒーに気をつけましょう

食事の前後にタンニンが含まれる飲み物は、鉄の吸収を悪くするのでなるべく控えましょう。鉄剤を服用する場合には、特に緑茶・コーヒーなどのタンニン含有物を制限しなくてもかまいません。

最後に・・・

鉄不足は貧血に限らず、さまざまな不調を引き起こす要因です。食事などに気を配りながら、鉄分をしっかりと補ってあげましょう。食事改善の効果が十分に出ないときは無理をせず、医療機関を受診しましょう。

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