気管支喘息と吸入薬

お薬の話

すっかり春らしい暖かい季節となりました。
そんな中「季節の変わり目」で喘息発作をおこし、苦しい思いをするかたもいらっしゃるかと思います。
気管支喘息は、空気の通り道である気道(気管支など)に炎症が起き、空気の流れが制限される病気で、発作的に咳や“ぜーぜー"と気管支が鳴る喘鳴、呼吸困難が起こります。この症状は「季節の変わり目」や台風、急な冷え込み、梅雨など気候の変動で変わると言われていますので、春先は発作が起きやすいのです。

また花粉の飛散量の多い年には、喘息が悪化することもあるようです。
2011年の花粉飛散量は去年の数倍、場所によっては10倍との説もあります。

この時期を喘息発作なく乗り切るために、気管支喘息とその治療に使用する吸入薬についておさらいしてみましょう。

気管支喘息は糖尿病や高血圧と同じ様に、長期管理が必要な病気です。
喘息治療の最終目標は、喘息をもっていない人々と同じような日常生活が送れることです。
最新の喘息治療は、「発作を止める」治療法から、症状がないときでも炎症の治療を継続する「発作を起こさない」治療法へと進んでいます。
一度、発作による気道の炎症が起こると、気道が過敏になる状態(気道が狭くなる状態)が、数週間から数ヶ月続きます。

気管支の断面図

図:グラクソスミスクラインHPより

気道が狭くなった状態では、少しの刺激でまた発作が起こり、さらに気道の炎症が続くという悪循環がおこりますので、たとえ症状がなくても炎症の治療を続ける必要があります。
そして気道の過敏状態が改善してくると、少しの刺激では発作が起こらなくなります。


長期に治療を続け喘息をコントロールするために使用されるのが吸入薬です。
この薬は他の喘息治療薬(内服薬、外用薬など)と併用して使われることもあります。

吸入薬には毎日規則的に使うコントローラー(長期管理薬)と、発作が起きたときだけ使うリリーバー(発作治療薬)の2種類があります。

 
コントローラー
(長期管理薬)

吸入ステロイド薬(フルタイドディスカス®)※
長時間作用性β2刺激薬(セレベントディスカス®)※
上記2剤混合型(アドエアディスカス®)※

リリーバー
(発作治療薬)
短時間作用性β2刺激薬(メプチンエアー®)※

※ 当院で採用している薬品です
コントローラーでは主に吸入ステロイド薬を使用し、気道の炎症を鎮めます。

吸入薬は飲み薬や注射薬と違い、気管支に直接届くため、ごく少ない量(飲み薬の1/100〜1/1000の量)で効果が得られ、副作用が少ないと考えられています。

吸入をしたら息をとめるようにします。これは薬を出来るだけ肺の中に留めておくためです。できれば10秒以上、発作時など苦しい場合でも無理のない範囲で息をとめます。
このようにして吸入された薬は10〜40%が肺に届いて本来の効果を示し、残りの60〜88%は吸入器具や口の中に付着してしまいますので、吸入後は器具のふき取りをし、また口の中に付着した薬はうがいで洗い流しましょう。
あるいは食直前に吸入する方法もよいかもしれません。
と言うのは、うがいをしても口の中に残ってしまった薬は食事と共に消化管に入り、肝臓で分解されるというのが、この方法だからです。

もし2種類以上の吸入薬を同時に使用する場合は、まず気管支拡張作用をもつ長時間作用性β刺激薬、次にステロイド薬の順で吸入するとよいでしょう。はじめにβ刺激薬で気管支を十分に拡げておけば、後から吸入する薬剤が気道の奥まで到達しやすくなります。5〜10分くらい間隔をあけて、次の吸入をするようにしてください。

発作時には、リリーバーの短時間作用性β刺激薬を吸入します。リリーバーは早めの使用がポイントです。ひどくなってからだと、よく効かないことがあるからです。

もし、決められた最大量を吸入しても発作がおさまらないときは、それ以上使わないで直ちに医師の診察を受けてください。過剰に吸入してしまうと、心臓への刺激が強まり危険です。

毎日続ける吸入薬などの治療が喘息発作の予防につながります。
ぜひ治療の参考になさってください。

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