水なしでお薬が飲める?! 口腔内崩壊錠とは?

お薬の話

 最近、水を飲まなくても、もしくは少量の水で服用できるお薬が増えています。
TVコマーシャルでも“水なしで、どこでもすぐ飲める!”と宣伝している胃薬や下痢止め薬が紹介されているのをよく目にします。これは、口腔内崩壊錠といって、“口の中で溶けやすく、水なし、または少量の水で服用できる製剤”ということです。お菓子のラムネのように溶ける錠剤です。今回は、この口腔内崩壊錠についてお話します。

口腔内崩壊錠は、従来のお水で服用する薬と有効成分はまったく同じものですが、薬を成型する材料に工夫がされています。医師が処方する薬にも、最近では多く取り入れられています。例えば、薬の名前に “OD”や“D”といったアルファベットがついているものがあります。これは、口腔内崩壊錠を意味しています。

<製品の名前の一例>

製品の名前 略語 英語表記 意味
タケプロン®OD錠※
ベイスン®OD錠※
OD Orally Disintegrating Tablets
Orally Disintegration
口腔内で崩壊
ガスター®D錠※、アリセプト®D錠※
レンドルミン®D錠※、ハルナール®D錠
D Disintegrating 崩壊
ゾーミッグ®RM錠 RM Rapidly Melt in Mouth 口腔内で溶解
マクサルトRPD®錠※ RPD Rapid Dissolution 速やかに溶解
マーズレン®ES錠 ES Easy to Swallow Tablet 容易に飲み込める
ストッパ®SP錠 (市販薬) SP Speedy すばやく溶ける

<※当院採用薬>
 お薬は、本来コップ一杯程度の水また白湯で服用することとされています。少ない水で飲むと薬が溶けにくいため、吸収が悪くなって薬の効果が十分に現われないばかりか、食道にくっついてその部分が刺激され、潰瘍ができてしまうことがあります。
一方、口腔内崩壊錠は、口の中で速やかに溶けるので、お薬の効果を十分に発揮でき、さらに、お薬の飲みづらさを軽減できるのです。

口腔内崩壊錠の特徴

<利点>
・ 唾液や少量の水で速やかに溶けるので、小児や高齢者、飲食物をうまく飲み込めない患者さんでも飲みやすい。
・ 腎疾患などで、水分摂取制限がある患者さんにも、無理なく服用できる。
・ 錠剤をすぐにつぶせるので、経管栄養チューブが入っている患者さんに、すぐに服用させることができる。

<問題点>
・ 錠剤が壊れやすく、吸湿しやすい。
・ 服用する複数の薬を1つの袋に一回分ずつまとめてパックする方法(一包化)ができない場合が多い。
・ 味がよくない。薬がのどに残る感じがする。
・ 口の中で溶けるので、効果が早く出てくると思われやすい。(お薬の主薬は、口ではなく胃や腸で吸収されます)

入院患者さんや高齢者は他にも普通の(口の中で溶けない)薬を飲んでいることが多いので、やはり、飲むには水が要ることになります。しかし、一剤でも口の中で溶けやすいお薬があれば、服用しやすくなります。 実際には、上記のような利点や問題点を考慮し、それぞれの患者さんにあった薬を医師が処方をしています。


  最近の製剤技術は素晴らしく、消化性潰瘍治療薬、排尿障害治療薬、糖尿病治療薬、降圧薬、睡眠薬、認知症治療薬などさまざまな領域の口腔内崩壊錠が開発されています。今後も小児用薬や解熱鎮痛薬製剤への応用、技術の向上、味の工夫などがなされて、もっと飲みやすいお薬が開発されていくことでしょう。



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