糖尿病の診断基準が新しくなりました

検査のお話

 2010年7月1日に施行された日本糖尿病学会の「新・糖尿病診断基準」で、
糖尿病型の判定に「HbA1c≧6.1%」という項目が加わりました。

『糖尿病型』とは検査時の血糖値が高い状態にあることで、
糖尿病である可能性が高い状態をいいます。
いわゆる「糖尿病の気がある」「糖尿病の疑いがある」状態の事です。

『HbA1c』とは、赤血球中のヘモグロビン(Hb)に糖分が結合したもので、これを検査すると過去2ヶ月位の平均的な血糖値を知ることができます。血糖値は刻々と変化をしており、1回の血糖値検査ではその人の「その時の血糖値」はわかりますが、「平均的な血糖値の高さ」を把握するのが難しいのです。しかしHbA1c値は直前の食事の影響などを受けないため、一度の検査で比較的容易に平均的な血糖値を把握することができます。

HbA1cの正常範囲は概ね5.1%以下位で、厚生労働省の国民健康・栄養調査では5.6%以上を「糖尿病予備群」、6.1%以上を「糖尿病が強く疑われる」としています。 このHbA1cは今まで糖尿病の血糖値をコントロールする指標として多く用いられ、また糖尿病診断の補助的項目として用いられてきました。 新しい診断基準ではこのHbA1cと血糖値を同日に測定し、その測定結果が両方とも「糖尿病型」であれば、 1回の検査で糖尿病と診断できるようになり、より早い段階で糖尿病の治療を行うことを目的としています。

 2010年、日本の糖尿病人口はついに1000万人を超えました。
しかし、糖尿病人口約1000万人のうち、定期的に医療機関を受診している方は4分の1に満たないことが厚生労働省の調査で明らかになっています。
糖尿病は自覚症状が現れにくく、血液検査を受けて初めて発症に気付く場合も少なくありません。 また、発症に気付かずに治療を行わないでいるとさまざまな合併症が引き起こされ、やがては死に至る場合もあります。
しかし、糖尿病の病態の解明と治療方法は日々大きく進歩しており、適切な治療を早期から開始することで、糖尿病の発症を遅らせたり、合併症の発症を抑えられることも分かっています。

 定期的に血液検査を受け、異常値が出てしまったり、糖尿病と診断されたら、医師の指示に従い、正しい対策を行うことが大切です。
糖尿病は一度なったら治らない病気です。糖尿病にならない生活習慣を送ることも大事ですが、糖尿病と診断された場合には合併症を発症させないためにも、定期的な検査を受けていただくことをお願いします。

糖尿病の臨床診断のフローチャート
OGTT:10時間以上の絶食後に75gのブドウ糖を溶かした水を飲んで、その後の血糖値の変動から糖尿病を判定する経口ブドウ糖負荷試験





「世界糖尿病デー」

 11月14日は「世界糖尿病デー」でした。
拡大を続ける糖尿病の脅威を踏まえ、
国連は11月14日を「世界糖尿病デー」として指定しました。
国際糖尿病連合(IDF)は、”Unite for Diabetes”(糖尿病との闘いのため団結せよ)というキャッチフレーズと、国連や空を表す「ブルー」と、団結を表す「輪」を使用したシンボルマークを採用し、全世界での糖尿病抑制に向けたキャンペーンを推進しています。


     


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