COPD(慢性閉塞性肺疾患)とその治療薬について

お薬の話

皆さんは、『COPD』という病名を聞いたことはありますか?
COPDとは肺気腫や慢性気管支炎などのことを指し、厚生労働省の統計では死亡者数は男性に多く、2017年では男性の死因順位の第8位でした。

COPD

日本人のCOPD有病率は、喫煙者と喫煙経験者で、高齢になるほど高くなる傾向がわかっています。しかし、2018年12月に実施した調査では「どんな病気か知っている」と「名前は聞いたことがある」と答えた人は28.1%。「知らない」と答えた人は71.9%と認知度が低いのが現状です。

COPDとは
階段の上り下りなど体を動かした時に息切れがしたり、風邪でもないのに咳や痰が続くなどが主な症状です。COPDが進行すると少し動いただけでも息切れし、日常生活もままならなくなります。また、肺だけでなく全身に影響をもたらし栄養障害、心・血管疾患、骨粗鬆症、糖尿病、うつ病などを併病する全身疾患であるといわれています。
COPDとは
COPDの原因
COPDは別名たばこ病とも言われ、原因の90%以上は喫煙です。喫煙開始の年齢が若いほど、また1日の喫煙本数が多いほどなりやすく、進行しやすいと言われています。その他、受動喫煙や大気汚染、職業的な塵埃、化学物質も原因と考えられます。
COPDの診断
スパイロメーターという器械を使う呼吸機能検査(スパイロ検査)と喫煙歴、労作時の呼吸困難、慢性的な咳や痰などから総合的に診断されます。
COPDの治療
禁煙、薬物療法、呼吸リハビリテーションがありますが、それはCOPDを根本的に治しもとの健康的な肺に戻す治療法ではありません。しかし、少しでも早い段階で適切な治療を開始することで症状の改善と将来のリスクを軽減することはできます。薬物療法では気管支を拡げて呼吸を楽にする気管支拡張薬が中心で、その他、痰を出しやすくする去痰薬、感染症を防ぐ抗生物質や増悪を繰り返す場合には吸入ステロイド薬が使用されることがあります。

気管支拡張薬

長時間作用性抗コリン薬

神経伝達物質のアセチルコリンを阻害して気管支を拡げる作用を持ち、最も効果のある気管支拡張薬です。1日1回の吸入で作用が12〜24時間持続します。しかし、閉塞隅角緑内障の患者さんには禁忌、前立腺肥大症の患者さんではまれに排尿困難症状を悪化させることがあります。

代表的なお薬

スピリーバ®︎など

長時間作用性β2刺激薬

交感神経のβ2受容体を刺激し、気管支を拡げます。製品により異なりますが1日1回または2回の吸入で作用が12〜24時間持続します。吸入薬より効果は劣りますが貼付剤のβ2刺激薬が使用されることもあります。副作用で動悸、脈の乱れ、手のふるえなどが起きることがあります。

代表的なお薬

セレベント®︎ツロブテロールテープ(貼付剤)など

長時間作用性抗コリン薬+β2刺激薬配合剤

作用機序と時間が異なる薬剤の効果を持ち、より強力な効果が期待できます。それぞれを単剤で使用した時と比べ閉塞性障害や肺過膨張効果があり、息切れも改善できます。

代表的なお薬

アノーロ®︎、ウルティブロ®︎、スピオルト®︎

長時間作用性β2刺激薬+ステロイド配合薬

息切れなどの症状が強く増悪を起こしやすい方、喘息とCOPDの合併症例に使用されます。吸入後はのどの荒れ、のどの刺激などの副作用予防のためうがいが必要です。

代表的な薬剤

シムビコート®︎アドエア®︎レルベア®︎など

抗コリン薬+長時間作用性β2刺激薬+ステロイド配合薬

3成分配合の治療薬です。吸入後はのどの荒れ、のどの刺激などの副作用予防のためうがいが必要です。

代表的なお薬

テルリジー®

※その他、テオフィリンという気管支拡張作用を持つ飲み薬が使われることもあります。

去痰薬

痰の切れをよくして出しやすくします。

代表的なお薬

カルボシステインブロムヘキシンアンブロキソール

抗生物質(マクロライド)

少量を長期間内服することがあります。効果は人により異なりますが、気管支の炎症がおさまり、痰の量が減少するといわれています。

代表的なお薬

クラリスロマイシンなど

※太字は当院採用薬

ワクチン接種

COPD患者さんは感染症が悪化しやすく、それが増悪の原因になることがあります。増悪を防ぐためのワクチンにはインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンがあります。インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンを併用するとより効果的です。

COPDは多くの人が気づいていない、または正しく診断されていない生活習慣病だといわれています。
軽く考えずに、心配な症状があれば、是非、ご相談ください。

COPD情報サイト(gold-jac.jp)より一部引用

2019年7月 薬剤科

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