百日咳とは

検査のお話

みなさん、最近咳が長引いている・・ということはありませんか?
風邪のような症状で、しつこい咳が続く百日咳。
今回は、百日咳についてお話しします。

百日咳は、けいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする感染症です。
息を吸い込むときに『ヒュー』という音が出たり、夜間に咳の発作が起きたりします。
乳児期早期から感染し、1歳以下の乳児、 とくに生後6ヶ月以下では死に至る危険性もあります。
世界の百日咳患者数は、年間2000〜4000万人で そのほとんどが小児ですが、
近年では成人でも増加傾向にあります。
年間死亡数は推定約20〜40万人とされています。


<病原体・感染経路>
百日咳菌(Bordetella pertussis)が感染源。
感染経路は、咳やくしゃみをしたときに出るしぶきを直接吸いこんでしまう飛沫感染や、咳やくしゃみをおさえた手を介して感染をする接触感染があります。


<臨床症状>
症状の現れ方は、3期にわかれます。

① カタル期
  (約2週間)
通常7〜10日間程度の潜伏期を経て、普通のかぜ症状で始まり、次第に咳の回数が増えて程度も激しくなります。
② 痙咳期
  (約2〜3週間)
次第に特徴ある発作性けいれん性の咳となり、嘔吐を伴うこともあります。また、顔面浮腫・眼球結膜出血・鼻出血なども見られることがあります。発作は、夜間に多くみられます。乳児期早期では、特徴的な咳は無く、無呼吸発作からチアノーゼ・けいれん・呼吸停止と進展することがあります。
③ 回復期
  (2、3週〜)
回復期(2、3週〜):激しい発作は次第に減り、2〜3週間で認められなくなります。その後も時折忘れた頃に発作性の咳が出ます。全経過後、約2〜3ヶ月で回復します。
※成人の場合は、咳が長引きますが典型的な発作性の咳を示すことはなく、
 やがて回復に向かいます。軽症で診断が見逃されやすいので、乳児に対する感染源として注意が必要です!


<検査診断>
血清学的検査、菌培養検査、遺伝子検査などがあります。
発症から4週間以内では培養と遺伝子検査、4週間以降なら血清検査による診断が推奨されています。

血清学的検査 血液中の百日咳菌の抗体価を測定します。2週間以上の間隔をあけて2回採血を行い、抗体価の上昇があるか確認します。
検査の結果が出るまでには時間がかかり、またワクチン歴を考慮する必要があります。
菌培養検査 患者さんの鼻や咽頭から採取した粘液検体を、培地に塗布し、培養後に判定します。菌はカタル期後半に検出され、痙咳期に入ると検出されにくくなるため、実際には菌の同定は困難なことが多いです。
また、ワクチン摂取者や成人患者からの菌の検出はほとんど期待出来ません。
遺伝子検査 病原体の遺伝子(DNA)を検出する検査で、最も感度の高い検査法としてLAMP法があります。このLAMP法は、菌の同定による確定診断として有効な検査です。
2016年より、この遺伝子検査が健康保険適用となり検査会社での受託検査が可能となっています。
※当院でも、平成29年4月1日より検査が可能となっています。


<治療・予防>
百日咳菌に対する治療としては、エリスロマイシン(EM)・クラリスロマイシン(CAM)などの
マクロライド系の抗菌薬が用いられます。
早めの抗菌薬投与が、 症状の軽減と周囲への拡散防止のためにも必要と考えられています。
予防では、世界各国がDPTワクチンの普及を強力に進めています。
日本で現在使われている、ジフテリア・破傷風・百日咳のDPT三種混合ワクチンは、
生後3〜90ヶ月(第1期)に3回、及びその12〜18ヶ月後に追加接種を行います。
続いて11〜12歳(第2期)に、DT二種混合ワクチンを接種します。

※ワクチン接種による効果は4〜12年と見積もられており、 時間の経過とともに減弱していく可能性があります。
したがって、 抗体価の低下する年齢では百日咳にかかる危険性が高くなります。

咳がでたら、まずマスクをして他の人に移さないようにしましょう!!
また、接触感染を防ぐ為にきちんと手洗いをすることも大切です!

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